高木家の惨劇

満足度:★★★☆☆ 「小道具(=煙草)の扱いが心憎い」

 「高木家の惨劇」は高木家の当主を殺した犯人を、警視庁の加賀美(捜査一課長)が関係者のアリバイをもとに追求していく話だ。高木家の当主、孝平が拳銃で殺された。関係者はいずれも殺人の動機があった。しかしいずれも事件発生当時のアリバイをもっていた。
 本書で注目したのは、警視庁の加賀美が主人公となっていることだ。戦前の捜査は自白を中心にしていた。そこでは推理という理知的な行為を差しはさむ余地はない。ひっぱたき(72)で自白を引き出せばよいからだ。それが敗戦による改革で、証拠にもとづく理詰めの捜査が主役となった。それによって警察が探偵小説の舞台となりえたのだ。
 高木家の因縁を犯人の動機にからめたら、もっとよかったと思う。

2010/9/15読了(春陽文庫