山屋敷秘図 切支丹・異国小説集―山田風太郎妖異小説コレクション

※満足度:☆☆☆☆☆(太字は初読)
スピロヘータ氏来朝記/邪宗門仏/奇蹟屋/姫君何処におらすか/伴天連地獄(単行本初収録)/邪宗門頭巾(単行本初収録)/不知火軍記盲僧秘帖踏絵の軍師/売色使徒行伝/万人抗(ワンインカン)/蓮華盗賊/降倭変/(解説 日下三蔵
※本書で風太郎の切支丹ものが単行本未収録作品を含め、すべて読める。しかし配列が発表順になっていないのは中途半端な印象(前作『地獄太夫』は発表順になっていたのに)。筆者の切支丹ものは1つのジャンルとして成立しているので、このテーマをどのように深化させていったかがわかる編纂であってほしかった。発表順にならべたものを以下にあげる
⇒「スペヒロータ氏来朝記」(昭24、記念すべき第一作)⇒「邪宗門仏」(昭24)⇒「奇蹟屋」(昭24)⇒「山屋敷秘図」(昭25)⇒「盲僧秘帖」(昭29)⇒「邪宗門頭巾」(昭30)⇒「姫君何処におらすか」(昭31)⇒「不知火軍記」(昭33)⇒「伴天連地獄」(昭34、解説では昭25「ユーモアクラブ」掲載の「ころび切支丹」の改題再録という説も)⇒「売色使徒行伝」(昭48)
こうしてみると早い時期から傑作が並んでいることがわかる。当初から切支丹関係の資料を渉猟した成果といえるだろう。
※切支丹ものの作品集としては『売色使徒行伝』が一番よい。完全を期すなら本書。
風太郎作品には、しばしば正と邪、明と暗、光と影の二項対立が登場するが、信仰者と弾圧者、日本人と外国人、伴天連ところび伴天連といった対立軸をそなえた切支丹ものは、著者にとって格好のテーマであったに違いない。(解説より)