地獄太夫 初期短篇集―山田風太郎妖異小説コレクション

※満足度:☆☆☆★★(太字は初読)
みささぎ盗賊芍薬屋夫人/宗俊烏鷺合戦/地獄太夫/妖僧/山童伝/悲恋華陣/幽霊船棺桶丸/山田真竜軒/死顔を見せるな/起きろ一心斎/数珠かけ伝法/お玄関拝借/明智太閤/国貞源氏/殿様/一、二、三!/(解説 日下三蔵
※本シリーズは忍法帖・明治もの以外の時代小説を、単行本未収録作品、少年ものまで含めて集大成しようという企画(484ページ)。実際のところ、収録作品が廣済堂文庫の「山田風太郎傑作大全」と重複している。これでは「傑作大全」潰しではないか。それとも編者を「傑作大全」にくわえなかった、意趣返しなのか(少なくとも解説には登場していない)。個人的には単行本未収録作品、少年ものを最優先して編纂してほしかった。ただ本書のよい点は、作品を発表順にならべているので、その軌跡を追うことができることだ。これは大いに評価されてよいと思う。
※初期の作品ということもあり硬さが目立つ。「明智太閤」は好きな作品。それにしても「ミステリー傑作選」といい、「傑作大全」を全否定する姿勢はいかがなものか。風太郎作品のなかでも書簡体のものは面白い。
本シリーズおよび同時期に刊行される〈山田風太郎傑作大全〉第二期で、いままで単行本に収録されたことのある短篇は、すべて復刊される予定である(『幻妖桐の葉おとし』, p321)。
 今回あらたに同じ編者で選集を出し直すというのは疑問。一編集者が選集を読者に押しつける時代はとうに終わっている。