龍臥亭幻想(下)

龍臥亭幻想 下 (カッパノベルス)

龍臥亭幻想 下 (カッパノベルス)

満足度:☆☆☆★★(星3つ) 「『幻想』ではなく『龍臥亭幻滅』だった」

1.なんという目覚めの悪さ
 島田作品の後半は、謎の合理的、いや物理的な解決に紙幅が費やされる。なので見せ物の舞台裏を見せられているような、目覚めの悪さをいつも感じる。
 今回も魔神を現代に復活させるために、筆者はある人に超人的な活躍をさせている。幻想に酔うどころか読んでいて、こんな役目をさせられたあの人に同情してしまった。
 
2.合理的につきつめても残るものこそ書かなければならない
 島田作品の限界は幻想的な謎を物理的に解決するというフォーミュラにある。そうではなく、合理的な解決がなされても、なおかつそこに深淵が覗くという方向性こそ、ミステリーの進むべき道ではないのか。島田作品を読むたびに、そう思ってしまう。都筑道夫の「雪崩連太郎」シリーズの読後感に遠くおよばないのは、そういったわけなのだ。
 
3.現実にもたれかかって小説を書くな
 自分の作品をもっともらしくするために、都井睦雄登戸研究所電動車椅子事故といった事件、出来事をもちだすのはどうか。安易な方法に感じてしまう。
 
目次
第三章 三番目の死体(p. 7)
N研究所の思い出(p. 133)
第四章 龍臥亭幻想(p. 160)
森孝(しんこう)魔王 三(p. 183)
森孝(しんこう)魔王 四(p. 203)
終章 魔王の言葉(p. 276)