透明人間の納屋(独立作品。御手洗・石岡は登場しない)

透明人間の納屋 (ミステリーランド)

透明人間の納屋 (ミステリーランド)

満足度:☆☆☆★★ 「物理的にぶちこわすのなら、美しい消失など初めから書かなければよい」
ミステリー界の最先端を天駆けつづける騎士島田荘司が、透明人間の謎を解明!
1.舞台設定に問題あり
 筆者は本作で、現在も未解決な、ある社会問題を舞台の背景にえらんでいる。しかし筆者が創作したドラマは現実の深刻さを上回るものでない。現実を焼き直したにすぎないのだ。
 このような手法は安易な手法だ。なぜなら自分が構築したドラマでなく、現実によって読者を説得しているからだ。現実の社会問題をパズルの一片として流用するのはいただけない。現実を凌駕するほどの虚構を構築できないなら、実際の事件をモチーフにする意味はない。
 
2.話法が気になった
 主人公の文章がおかしい。物語の語り手は「ぼく」だ。すでに大人になった「ぼく」は九歳の自分を回顧している。そうなってくると、「ぼく」の文章が稚拙なのは異様だ。自分の息子に伝える、といった形式を挟まないと。
 
3.島田のミステリー観の問題性
 またしても筆者は美しい謎を見せ、それをものの見事にぶちこわした。筆者の能力というより、方法論の問題であるのはあきらかだ。