季刊・島田荘司―Magazine from Los Angeles, Vol.04(2005Spring)

満足度:☆☆★★★(星2つ) 「本人の自己満足であふれる本書は、ズボンの前が開いたまま外出するくらい恥ずかしい」
 講演録、伝記、評論はいずれも歴史情報の寄せ集めと、それにもとづく独善的な見解だらけだ。なぜそうなってしまうのか。それは歴史をあつかっているにもかからわず、資料に言及していないし、出来事がおこった年代もあきらかにしていないからだ。つまり筆者の文章には信用できない生煮えの情報でいっぱいなのだ。とくに講演録と日本学の勧めがひどい。

 作者は今回も日本人の道徳(いじめ指向の道徳[p. 413]、威張り、日本人特有の加虐性[p. 411])を否定し、新しい日本人像の構築(「将来の日本人のよりよい人情設計を考える」)を今回も主張する。しかしロサンゼルスという対岸から、いくらご立派な主張されても、ちっとも響いてこないのだ。

 生半可な知識をつめこんだり、独善的な社会正義を訴えることはもう止めたらどうか。これからは作家の本業、すなわち読者を魅了するような物語をつむぐことに傾注してほしい。
 
はじめに(p. 1)
1.書き下ろし読み切り小説 最後の一球(p. 5)
2.鞆(とも)の叙情詩(p. 220)
3.誌上再現 島田荘司展(p. 242)
4.一枚の写真から 第4回「校内コンクール、優勝の日」(p. 256)
5.広島県立誠之館高校講演録「鎖国の終わり、世界に出よう」(p. 264)
6.阿部正弘伝・窪田次郎伝(p. 308)
7.本格評論「日本学の勧め」第4回 (p. 341)
8.地球紀行追想フォトエッセイ・思い出入れの小箱たち 第四回「小学五年生の夏休みの課題」(p. 416)
後書き(p. 425)

国史(p. 312), 調査がないで(p. 408)
※2007年3月1日読了