ウロボロスの偽書

ウロボロスの偽書

ウロボロスの偽書

満足度:☆★★★★ 「読み手の不在」
 
竹本健治が連載を始めた本格推理にいつの間にか殺人鬼の手記がまぎれこみ始めた! 奇々怪々な超ミステリー。」と帯にある。
 
 本書では殺人犯の手記、筆者の心境小説、芸者殺人ミステリーの3つが交錯している。しだいに三者の境界が判然としなくなり、渾然一体となったひとつの物語へ向かう。ところが筆者は書き手としての役割を放棄して、真相をあきらかにしないまま作品を終えている。
 筆者は本文で「小説にはプロレスほどのルールもない」とのべている。しかし言い訳にしか聞こえない。私は今回、この500頁超の本書を10日かけて読んだ。そして失望だけが残った。
※「(友成純一には)あまりに有名な『オギクボ寝ションベン事件』というのがあるが、これは本人の名誉のために特に内容を伏しておこう」(括弧内筆者)(p.194)。