原発のウソ

原発のウソ (扶桑社新書)

原発のウソ (扶桑社新書)

 福島第一原発よりも原発じたいの問題が中心になっている。福島の事故については武田邦彦『エネルギーと原発のウソをすべて話そう』のほうが参考になる情報が多い。以下、本書で気になった点を抜粋。
 
チェルノブイリ事故では放射能の拡散を防ぐために、軍人、退役軍人、労働者たち60万人を動員した(36頁)。しかし福島第一原発の事故では政府は東京電力の存続を決めた(108頁。したがって東京電力は今も当事者として事後処理にあたっている。そのため人的な資源を有効に投入できず、問題解決を長引かせるばかりか、協力企業の作業員に被曝のリスクを負わせている)。
 
JOC事故のときに燃えた(核分裂した)ウランの量はわずか1mgにすぎない。手のひらに乗せても、なにも感じることがないほどの量だった。しかしたった1mgのウランが燃えただけで、何百人が被曝し、大内さんと篠原さんはすさまじい苦しみの末に亡くなった(64頁)。
 
放射性物質は風に乗って流れる(74頁)。風向きと直角に逃げる(79頁)。
 
電力会社の社員や原発職員(とくに幹部)の「家族」の動きを注視する(83頁)。
 
(政府や電力会社がウソをまき散らしたとしても)だまされた人にはだまされた人なりの責任がある(94頁)
 
たかだか60年ほどの歴史しかない電力会社に、セシウム137のように1000分の1に減るまでに300年もかかる大量の放射性物質を大量につくらせるのは、どう考えても理不尽(178頁、59頁)。

2011/8/30読了