ミレニアム3(下)

ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士 下

ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士 下

満足度:★★★☆☆ 「雑誌編集者による妄想の産物」
 結末までの展開は、RPGのクエストをこなしているように、順調に進んでいった。この点が残念だった。最後にニーダーマンが慌てて登場してきて、笑った。筆者も途中で彼について気づいたのだろうか。
 本書への不満は、著者ラーソンの雑誌への思い入れが作品に悪影響をあたえていることだ。本書を読んで気づくのは、ジャーナリストである主人公に都合よく物語が進んでいくことだ。たとえば政府要人が彼の証言を疑念を抱くことなく、受け入れている場面などだ。警察関係者も彼の言葉を疑いもしない。主人公にまんまと騙される特別分析班の面々には、逆に気の毒なくらいだ。
 結局のところシリーズすべてにおいて主人公のミカエルが中心にいて、最終的に手柄を独占している。ジャーナリストだった著者の願望が、このように露骨なほど作品にあらわれているのだ。この点はいただけない。興ざめだ(島田荘司のような醜悪さがないのが、救いだが)。
 また本書で目立つのは、著者が一貫して女性の立場に立っていることだ。肯定的な批評もあるようだ。しかしわたしはこの点が気に入らなかった。つまり本当に女性の立場に立つ人は、意図してそのような態度をとるものだろうか。英語を生かじりした人が、やたらと英単語を振りかざすことがある。女性に対する差別や暴力をめぐる筆者の姿勢は、正論にのっかっているだけなのか、それともそれが彼の人生哲学なのか。

7/8読了