殺人全書

殺人全書 (光文社文庫)

殺人全書 (光文社文庫)

満足度:★★☆☆☆ 「長すぎる」

 過去の犯罪を調書などの当時の記録から読み物にしたのが本作だ。当時の関係者からも取材をして、彼らの証言ものせている。関係者の気持ちなどおかまいなしの取材姿勢は疑問に思った。まるでハイエナのような取材である。なぜなら筆者の記事は読者の通俗な好奇心を満たしているだけだからだ。相手がいる取材では、取材する側にもっと強い動機が必要だった。
 連載していた「アサヒ芸能」の記事を、そのまま収録したのだろうか。こんな異様で分厚い本ができあがってしまった(879頁もある)。松本清張の『ミステリーの系譜』と較べると、本書は明らかに劣る。また書籍化にあたっては、写真や図版を一枚でも載せる工夫も欲しかった。(ただし索引をつくったことは評価できる。)
 
 つまり昭和二十年代から三十年代にかけて妊婦は百人に八人くらいの割合で死亡していた。ところが昭和四十年代に入ってから、百人に二、三人の死亡率に低下している。・・・・・・。医師がどのように手を尽くそうとも、亡くなる母親が,百人に二、三人はある.意志はそういう意識で妊婦たちに対応している。(782頁)

2010/6/21読了(2009/3/13開始、2010/4/8再開)