やし酒飲み

やし酒飲み (晶文社クラシックス)

やし酒飲み (晶文社クラシックス)

満足度:★★☆☆☆ 「ことばの世界をそのまま文字にした失敗作」

 びっくりするほど退屈な読書だった。なぜかというと、ツュツオーラが荒唐無稽な物語をそのまま描いているからだ。本書は筆者の創作だが、ナイジェリアの人びとが語り伝えてきた物語を下敷きにしている。そのため死者が歩いたりと、非現実の話がつづく。問題は筆者が民話の内容をそのまま英文にしたことだ。そのため現実と非現実の区別する私たちにとって、両者の混同する本書はなんとも間の抜けた話になってしまっているのだ。昔話がもはや子供の読み物になってしまっているように、現代の読書人には本書のスタイルは苦痛でしかない。日本で本書がアフリカ文学の代表作だとすれば、これほど不幸なことはない。

2010/8/1読了