大仏男

大仏男

大仏男

満足度:★★☆☆☆ 「人に薦めるほどの内容か」 
 
 某書評家がラジオで紹介していたので、読んでみた。
 売れないお笑いコンビ(男女)が霊能者を演じるという話だ。主人公たちは人をミスリードして、金を稼いでいく。その過程で相談者を欺(あざむ)く舞台裏を描いている。そのため読んでいても、不快な感情がつきまとう。この手の話題を取り上げた作者のセンスを、それを評価する書評家ともに、疑問に感じた。
 文章のマズイ点も目に付いた。まず霊能者を演じるタクロウの扱いだ。霊能者を印象づけるあまり、描写がなおざりになっている。作家ならもっと工夫できただろう。また巻末で週刊誌の記者が地の文で事件の解説しはじめたのも、呆れてしまった(279ページ)。作者は面倒くさくなったのだろうか。つじつまを合わせる感がありありで、しらける。最後に作者が294ページで、霊能者の存在を肯定する点にもひっかかった。霊は人間の心の中にあるという「新解釈」もどうかと思う。
 以上の点から、貴重な時間を費やして読むほどの本ではなかった。この程度の本を薦めるのが書評家なら、誰だって書評家を名乗ることはできるだろう。本というより書評家という存在について考えさせられた。

 

5/2読了