黒後家蜘蛛の会(1)

黒後家蜘蛛の会 1 (創元推理文庫 167-1)

黒後家蜘蛛の会 1 (創元推理文庫 167-1)

満足度:☆☆☆★★ 「SF作家のミステリー愛」

 黒後家蜘蛛の面白さは、会員たちのおしゃべりにある。ああでもない、こうでもないとおしゃべりしたあと、ヘンリーが締める。なかなかうまい形式なのだ。ところが第一巻は筆者が物語の形式を模索する過程にある。一話ごとにいろいろなことを試みているのだ。トリックも読者のあげ足をとったり、読者の錯覚に訴えたものがとても多い。私が好きな歴史推理は登場しない。逆にさまざまな趣向を楽しめる。とくに感心したのが、ホルステッドの五行詩だ。第一巻ではホルステッドが『イリアス』から自作の五行詩を披露する。それによって短編集のなかに時間の流れがうまれている。なかなかうまい手法だ。
 
〈目次〉
会心の笑い(なんとヘンリーの過去が最初に語られていた)
贋物のPh(なぜ落第生のランス・ファロンがテストで一番になったか)
実を言えば(だれが現金と流通証券を盗んだか、五行詩
行け、小さき書物よ(どうやってマッチブックで情報を送るのか、五行詩
日曜の朝早(だれがゴンザロの妹を殺したか、五行詩
明白な要素(予知能力は存在するか、五行詩
指し示す指(義父は何を指差したのか)
何国代表?(犯人は何国代表を狙うのか)
ブロードウェーの子守歌(マニーが自宅での会食を主張し、会員に手料理をふるまう)
ヤンキー・ドゥードゥル都へ行く(軍上層部のだれが汚職に関与しているか、五行詩
不思議な省略(「アリスの不思議な省略」とは何なのか)
死角(だれが船上で草稿の情報を盗んだか)

読了