ウイルスの正体を捕らえる

ウイルスの正体を捕らえる―ヴェーロ細胞と感染症 (朝日選書 (661))

ウイルスの正体を捕らえる―ヴェーロ細胞と感染症 (朝日選書 (661))

満足度:☆☆★★★ 「もう少し工夫が欲しかった」
 ベロ細胞(vero cells)は日本生まれの組織培養細胞だ。本書はこの細胞を切り口にウィルスや細菌などの感染症の紹介している。ところがベロ細胞はポリオの研究にはじまり、ポリオワクチン生産の素材、未知の病気の診断材料へと応用範囲が広がっていった。このことはベロ細胞の位置づけが多元化したことをさす。なのでこの細胞を感染症を紹介する切り口とするには、無理がある。視点となるべきベロ細胞の位置づけが読むにつれて動くので、読みにくいのだ。読みやすくするために、第一部ベロ細胞、第二部感染症に分けるなど、もう少し工夫が欲しかった。技術うんぬんの話よりも、ポリオや狂犬病などの病気の話のほうが断然読み応えがあった。パストゥールに救われたメイスター少年の話は涙なしに読めません。

9/1読了