マラリアvs.人間

マラリアvs.人間

マラリアvs.人間

満足度:☆☆☆☆★ 「熱帯病の解明をめぐる人間ドラマが刺激的だ」

 恐竜絶滅、ワクチン開発をめぐる話以外はとても面白かった。妊婦は胎児(=異物)をかかえているため、免疫が弱体化する(128頁)。寄生虫という語のギリシャ語の起源が「他人の食卓で食べる人」という意味(102頁)。トニックウォーターには微量のキニーネが入っている(あの独特の苦みをだすため)。これを毎日のむと、抗マラリア効果をもつに十分な量のキニーネがとれるという(242頁)。本当だろうか。この筆者は読者を引き込む力をもっている。
 本書はタイトルで損をしている(原題を直訳は「マラリアは踊る」)。なんとかならなかったのだろうか。
 
〈目次〉
1. マラリア、ふたたび

    第一部 黒熱病(カラ・アザール)の長い苦しみ
2. インド、小さな村の子どもの死
3. 「政府の病気」がやってきた
4. 黒熱病の真犯人
5. 新知識、新治療法、そして新たな流行
6. 世界保健機関(WHO)、救済に乗り出す
7. 恐竜を絶滅させたのはカラ・アザールか?

    第二部 マラリア—ワクチンは事態を変えたか?
8. 妊婦アムポーンの死
9. 猿のマラリア、人のマラリア
10. 起源
11. 病因—微生物以前
12. 媒介者は蚊—イギリス人の物語
13. ノーベル賞は誰に?—イタリア人の物語
14. 世界マラリア撲滅計画
15. 免疫学の豪華な幕開け
16. ワクチン開発助成金のゆくえ
17. 幻のワクチン騒動
18. マラリア・ビジネスの重罪