聖と俗

満足度:☆☆☆★★ 「聖なるものとは何か」
 聖なるものとは何かを一言でいうと、宗教的な意味での物事の正しいあり方、秩序のことだ。筆者はこの点についてきちんと定義をしていない。驚くべきことだ。あとは聖なるものとは、こうだ、こうだ、こうだ、と続く。その意味で安心してよめたし、退屈な本でもあった。書き方に改善の余地がある。
 本書がどんな本かというと、神が力をふるう宗教的な世界とはどういうものかをのべた本だ。これを以下の順にのべている。世界の空間(第一章)と時間(第二章)に意味あるとはどういうことか(世界には中心がある。時間は可逆的だ)。この世界は意味=象徴(第三章)にとむとはどいういうことか(天、水、地、草木)。この世界では人間の一生はどうなっているか(第四章)。
 現代の非宗教的人間は宗教的な価値を否定する。筆者はその態度を否定的にとらえている。筆者はじしんがカトリックの学者であることをふまえ、宗教的な人間に立ち返るという結論にたっしている。筆者はキリスト教の信仰に回帰する(233頁)。
 
「具体的に言えば、聖なるものは遠い人類の神話時代に発し、古代社会および原始社会における人類の生存全般にわたって顕現した宗教的価値であり、やがて歴史時代の進展と共に衰退し、近代の工業社会に至ってほとんどその影を没しようとしているものである」(229頁, 訳者解説)。

8/23読了(1957年)