地獄変

地獄変 マジカルホラーシリーズ5 (マジカルホラー (5))

地獄変 マジカルホラーシリーズ5 (マジカルホラー (5))

日野日出志、『地獄変』を語る」より一部抜粋

(なぜ描き下ろしではひばり書房でなく、立風書房を選んだかというと)それは、もうギャラがよかったからですよ!/基本は少女向けですから、やっぱり女の子と主人公にしなきゃいけない。でも僕はあくまで少年漫画と思ってますから、そこの時点でちょっと苦しかったですね。/今だからいえるけど、立風のあのシリーズで納得できるのは一冊もないよ! あれはことごとく失敗ですから。最初から、娯楽漫画で女の子向けでっていわれるとダメなんですよ。自分がダメだからそういう漫画になっちゃっていると思いますよ。『霊少女魔子』とか「これでいいのかな」「これは違う違う」って思ってましたもん。読者に失礼かもしれないけど。納得しないままやってるから僕も苦しいんですよ。(pp. 196-97)
 
本来、大前提として漫画は娯楽でなきゃいけないと思うんですよ。その中にどれだけ自分の生き様を出せるかということを僕は考えていたんですね。でも途中で流れが「漫画は娯楽だけでいいんだよ」ということになってきたんですよ。娯楽だけで価値があるっている風に。僕もそう思いますよ。でも、それだと僕は出来ないんですよね。/(ホラー漫画というジャンルは)類型的な話でしょう? そういうのは描けといわれれば何本でも書けるんですよ。でも、面白くないんですよ。僕は幽霊がいるとかそういうことを一切信じていないですからいるとも思っていないし、怖いとも思ってないです。「怪奇」という意味では、悪霊よりも覚せい剤やってる奴が包丁をふりまわす方が怖いんですよ。
 
実は『地獄変』は、最初にじっくり下描きを完成させて、後は絵を入れるだけにして、それから、夜中に酒を飲んで、頭の中を真っ白にして、一気に描いたんですよ。/(漫画家を)辞めるつもりだったから、ケリがついたという気持ちはありましたね。誰も手伝ってもらうことなく、一人で描いたし、いい意味でも悪い意味でも本気でやりましたと言える作品で、評価云々とは関係なく、自分としての代表作ですね。

105円