幼年期の終わり

幼年期の終わり (光文社古典新訳文庫)

幼年期の終わり (光文社古典新訳文庫)

満足度:☆☆☆★★ 「こんな理由で人類が滅びるとは」
(あらすじ)異星人オーバーロードが突然、地球に現れた。彼らは圧倒的な技術力を背景に、人類を監視下におく。彼らが地球にやってきた目的はなにか。その秘密が明らかになるとき、人類の歴史は終わりを告げる。
 
 本書の異星人は非情な侵略者でなく、同情の対象だ。クラークは異星人の出現に意味を持たせている。そのため、彼らの意外な目的を考え出した。そうすることで火星人襲来などの、B級SFと一線を引いている。
 一方、オーバーロードはまるで「中間管理職」である。彼らは上司の命令をうけ、実行する。そうなってくるとぜんぜん怖くない。オーバーロードが自分たちの仕事を「困難な出産に立ち会う助産婦のようなもの」と説明している。このくだりを読んでいて泣けてきた。滅ぼされる側からいうのはなんだが、愛すべき異星人である。
 全体の構成をいえば、ジャン・ロドリクスの密航は不要だろう。すべて削除しても、クラークの伝えたいことは表現できるから。
 「V」のほうが話してはよくできている。いくらクラークが激怒しようとも。