蝶たちは今・・・

蝶たちは今… (講談社文庫 く 3-1)

蝶たちは今… (講談社文庫 く 3-1)

蝶たちは今… (1978年) (講談社文庫)

蝶たちは今… (1978年) (講談社文庫)

満足度:★★☆☆☆ 「謎の乱発で作品が台無しに」 
 謎の女は誰なのか。事故死だった男女が殺人だとすれば、誰がどうやって彼らを殺したのか。脅迫状の送り主は誰か。筆者の日下は大風呂敷を広げすぎた。気負いもあったのだろうか。その結果、筆者は解決の途上で主人公を殺してしまうという、醜態(しゅうたい)を演じている。
 作者の推理小説家としての資質に疑問を抱かせる部分が他にもあった。それはまず登場人物がおこなう会話だ。会話の読ませ方に工夫がない。読者に脚本の台詞の状態で読ませているのだ。そのため会話部分がまるで、「すだれ」みたいになっている。
 結末もひどい。結末での犯人の行動は「自分がやりました」と世間に公言しているようなものだ。それまでの息を潜め、自分の正体を隠そうとする犯人の苦労はなんだったのか。これでは被害者も、犯人も、真犯人も、そして読者もやりきれない。
 本書をよむと、推理小説は能天気なバカか、頭が良い人でないと書けないなあと、思ってしまう。推理小説家をめざす人は、こう書いてはいけないという、見本のような作品だ。

105円(2010/4/7読了)