遠きに目ありて

遠きに目ありて (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)

遠きに目ありて (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)

 「天藤真推理小説全集の構成について」
 九番目の長篇にあたる本書がなぜ「天藤真推理小説全集」第一巻になっているのか、初版を手に入れてようやくわかった。
 『遠きに目ありて』は筆者の第九作目の長編にあたる。正確には本書は連作短編集だ。巻末の著作リストで「短編集」のあつかいになっていないので、一作品としてあつかう。ちなみに八作目があの有名な『大誘拐』だ。
 ところが本書は「天藤真推理小説全集」の第一巻になっているのだ。そして本書以降は、第一長編「陽気な容疑者たち」から順に並んでいる。
 なぜなのか。初版(1992)を入手してその理由が判明した。本書は当初、創元推理文庫の「現代日本推理小説叢書」の一冊として世に出た。そののち、「天藤真推理小説全集」の刊行がはじまった。というわけで、「遠きに目ありて」が全集の最初という変則的な構成になっているのだ。したがって初版には「天藤真推理小説全集」の文字はない。あとから追記されている。
 
 「天藤真推理小説全集の刊行順について」
 「天藤真推理小説全集」は刊行年をみると、大きく3つに分けることができる。前期(『全集1』)、中期(『全集2〜6、10』)、後期(『全集7〜9、11〜17』)である。
 「全集」を刊行順にならべると、つぎのようになる(太字は所蔵)。
 
    『遠きに目ありて (天藤真推理小説全集1)』(1992)
 
    『陽気な容疑者たち 天藤真推理小説全集2』(1995.2)
    『死の内幕 天藤真推理小説全集3』(1995.3)
    『鈍い球音 天藤真推理小説全集4』(1995.6)
    『善人たちの夜 天藤真推理小説全集10』(1996.11)
    『皆殺しパーティ 天藤真推理小説全集5』(1997.3)
    『殺しへの招待 天藤真推理小説全集6』(1997.5)
 
    『炎の背景 天藤真推理小説全集7』(2000.3)
    『死角に消えた殺人者 天藤真推理小説全集8』(2000.5)
    大誘拐 天藤真推理小説全集9』(2000.7)
    『わが師はサタン 天藤真推理小説全集11』(2000.9)
    『親友記 天藤真推理小説全集12』(2000.11)
    『星を拾う男たち 天藤真推理小説全集13』(2001.1)
    『われら殺人者 天藤真推理小説全集14』(2001.3)
    『雲の中の証人 天藤真推理小説全集15』(2001.5)
    『背が高くて東大出 天藤真推理小説全集16』(2001.7)
    『犯罪は二人で 天藤真推理小説全集17』(2001.9)
 
 「天藤真推理小説全集の装丁について」
 「全集」には3種類のカバーが存在する。現在は、松尾かおるのカバーイラストで統一している。ところが「遠きに目ありて」は当初、渡辺啓介のイラストだった。さらに「全集」の刊行がはじまった中期には文字だけの、シンプルなカバーで統一された。それにあわせて、「遠きに目ありて」も文字だけのものへと変更された。そして最終的に、松尾かおるのカバーイラストで統一されることになった。つまり「遠きに目ありて」は3種類のカバーが、中期(全集2〜6,10)には2種類のカバーが存在するのだ。
 とくに文字だけのカバーはシンプルでよい。紙質も現在のものと異なっている。松尾かおるのイラストは、作品に内容をモチーフにしている。読者は作品に親しみたいのであって、このような先入観は余計である。

105円