幽霊が多すぎる

幽霊が多すぎる (創元推理文庫)

幽霊が多すぎる (創元推理文庫)

満足度:★★★★☆ 「心霊探偵が五人の幽霊に挑む」
(あらすじ)パラダイン男爵の館に出没する、幽霊の正体は何か。
 
 心霊探偵アレグザンダー・ヒーローは本物の心霊現象といつの日か遭遇するのを、夢見ている。そんな彼の活動は、幽霊のしわざか否か、人為が入っているか否かを、見極めることだ。推理小説の探偵はふつう「誰がやったのか」と問いかける。ところが本書のばあい、アレグザンダーは「怪奇現象に誰もかかわっていないのか」、それとも「誰かの仕業なのか」を問う。そして後者を排除することによって、前者に接近する。ギャリコがたくみなのは、主人公の活動が、探偵小説の「誰の犯行だったか」という問いと結果的に同じになっていることだ。
 前半部分はユーモアあふれる筆致がおおく、楽しい。このあたりはギャリコらしい。後半ではそれが影を潜めている。なんとも惜しい。
 主人公が女性にもて、誘惑に弱いのが難。
 
(第一の幽霊)イザベルの部屋にだけ現れ、むやみにいろいろなものを壊した無感情な霊(最初のポルターガイスト
(第二の幽霊)カーター夫人をねらった、いたずら好きで、素朴でほほえましい子どもっぽささえ感じられる霊(本文429)
(第三の幽霊)スーザンの皿に気味の悪いものを出現させた霊
(第四の幽霊)館をうろつきまわり、そのいまわしい力をスーザンとパラダイン・カントリー・クラブに向けた霊(尼僧、ハープ等)
(第五の幽霊)アレグザンダーを襲った、巨大なうろこだらけのおぞましい怪物(本文366)

105円