津山三十人殺し

津山三十人殺し―日本犯罪史上空前の惨劇 (新潮OH!文庫)

津山三十人殺し―日本犯罪史上空前の惨劇 (新潮OH!文庫)

満足度:☆☆★★★ 「実録体小説風の文が本書の価値を減じている」

 筆者は「第二部 犯人」で、犯人の視点で事件を再構成している。モンタージュ(資料の切り張り)の有効性は議論の余地があるとして、問題なのはその記述の仕方だ。いわゆる実録体小説の体裁なのだ。津山三十人殺し犯人の行動を、あたかも自分がその場にいたかのごとき筆致で描いている。それにくわえ、事実に空想をまじえて潤色している。そのため、小説まがいの奇妙な読み物になっている。記録としても中途半端、犯罪小説としてももの足りない。史実として事件を知ろうとする人は他の文献をあたった方がよい。