名探偵が八人

満足度:☆☆☆★★ 「名探偵は四人だけ」
 都筑道夫による探偵小説の選集だ。以下の八作を収録している(自作は付録あつかい)。現代作家の四編については「変わったもの」に狙いをつけて、選んでいった。生島、佐野、三好の三作は主人公が本職(刑事、刑事部長、記者)だ。厳密には名探偵とするには、内容もふくめ無理がある。日本のハードボイルドは作者の陶酔ばかり鼻につく。どうもおかしい。
 本作での収穫は海渡英祐のユーモアミステリーだった。あらためて読んでみたいと感じた。
 編者の「銀座の児雷也」は、エラリー・クィーンが戦前、東京を訪問していたという設定での創作だ。基本的にはキリオン・スレイの構成を焼き直している。本作のトリックは知識の有無に頼っている。したがって説得力がうすい。
 横溝作品は金田一耕助が獄門島へ向かう途中の出来事という設定だ。「獄門島」とあわせて読むと、楽しみが増す。
 
生島治郎「兇悪の友」(会社ゴロが殺された。しかし捜査は難航する。あぶれ刑事の「おれ」に声がかかった)
海渡英祐「ネコかぶりのネコ」(早瀬邦彦は幼なじみと再会する。どうやら彼女の叔母の家で、ネコの失踪・殺害が相次いでいるらしい。幼なじみの頼みでいっしょに出かけたところ、叔母の死に遭遇する)
佐野洋「折鶴の毒」(男性の毒殺死体が見つかった。屑籠で見つかった写真の切れ端には、自分が折った折り鶴が写っていた)
三好徹「天使の棄児」(私が勤める新聞社の支局に、男が赤ん坊を預けたあと消えた。私は置き去り事件の真相を追う)
都筑道夫「銀座の児雷也
福永武彦「失踪事件」(未読)
横溝正史百日紅の下にて」
江戸川乱歩「D坂の殺人事件」
都筑道夫「解説」

105円