天に還る舟
- 作者: 島田荘司,小島正樹
- 出版社/メーカー: (株)南雲堂
- 発売日: 2005/07/01
- メディア: 単行本
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満足度:☆☆★★★ 「作品をささえる設定・テーマが弱い」1.設定への疑問
読んでいて「それはないだろう」と引っかかる部分が目立つ。まず警視庁の刑事が妻の実家で埼玉県警の捜査に休暇中の身分で加わっている。一般人(海老沢浩一)が身分を偽って捜査現場に出入りする。読んでいて、まずありえない話だなと興醒めした(中村刑事が登場する必然性はうすい)。このあたりは厳密にしないと、ただのお話しになってしまう。連続殺人なら、なおさらだ。それができないんだったら犯罪捜査のドキュメンタリーのほうがずっと面白い。
また、「実は関係者だった」式のつじつま合わせはみっともないのでやめたほうがよい。
2.物語を支えるテーマが弱い
犯人の殺害動機は一言でいうと復讐だ。「目には目を」式の殺害動機が物語のレベルを低くしている。犯人と対決するなどして、彼の応報主義を否定してやらないと。そうでないと被害者もその肉親もうかばれない。
3.筆者の出身地を舞台にしたことは正解
秩父・長瀞(ながとろ)の観光案内になっているところがよかった。欧米を舞台にした、「海外小説」風の駄作を濫発している島田荘司より、ずっとましだ。
※執筆分担にかんする私の推測
小島は自分の等身大の「海老沢浩一」を主人公とした話を書いた。師匠の島田が、それでは商業的にアピールが足りないからと、「火刑都市」の中村を主人公に登場させて加筆。おかげで海老沢は終始、頭をコツコツ叩いているだけの脇役へと転落。結果、本格なのか社会派なのか、わけのわからん話になってしまった・・・。