若者殺しの時代

若者殺しの時代 (講談社現代新書)

若者殺しの時代 (講談社現代新書)

満足度:☆☆★★★ 「井上章一になりそこねた男」
 堀井はデータマンに徹すべきだった。80年代の正体とはなんだったのか。堀井は「若者」というキーワードで語る。若者が市場から認知され、収奪の対象となる。これが80年代から顕著になるというのが基本的な流れだ。私がとくに注目したのは、クリスマス、ディズニーランドなど女性の夢(=欲望)を市場が具現化していったことだ。この流れのなかで、〈若者殺し〉が加速した―なんというおぞましい光景! そして今なおこの流れは続いているのではないのか。堀井のあつかったテーマはかなり重要なのだ。
 しかし堀井は重要なテーマを扱うことに失敗している。論証できていないのだ。というか彼にはデータを分析する、という技術がないという印象をうける。そのため本書は堀井じしんのノスタルジックな思い出話で埋め尽くされている。読んでいて恥ずかしくなった。
 結局のところ、堀井には本書の話は荷が重かったということだ。〈若者殺しの時代〉を「うまくやってくれ」「逃げろ」という結論はあんまりだ。また文化・伝統への逃避という代案もありきたりで失望した。